2023年10月1日公開 更新:2023年10月4日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

38. ルガーノ音楽祭-7

6月28日(日) 懲りずに、今日の湖。睡眠も5時間取れたので、イタリアの避暑地で有名なコモに行ってみた。車で30分少々で行ける程近いのだが、反対側、湖の北側をぐるりと回って、まずはコモ湖の真珠と呼ばれるベラッジオへ向かった。途中、レッコ周辺の切り立った山と氷河湖、白いヨットがため息が出る位美しかった。一番の絶景ポイントでは車が停められず、掲載できる程の写真が無い。また、ベラッジオでは車を停める所がどこにもなく(唯一停められたのは、山を越えた反対側の港)、ここへはコモから船でくるのが一番良さそうだ。コモでは船に乗ろうとチケットも買ったのだが、出発ターミナルを間違え、次の便では2人手前で定員オーバーで乗れず、結局ピザを食べて帰った。コモの観光は沢山情報があるので、ここでは、ばっさりと省略。

コモは、避暑地として有名。避暑地って、暑さを避けて涼しい所へ滞在、が読んで字の如し。は、ヨーロッパでは通用しないのが今回実感。コモもルガーノも連日30数℃で太陽がさんさんと輝く。早い話が、短い夏に南に行って太陽を浴びるのが、ヨーロッパの避暑。しかし、誰が「避暑」なんて訳したんだ! 間逆、「向暑」でしょう。

18:30からは、教会でPompili、Martynov、Chen、Zhaoによるコンサートがあるのだが、私は、明日行われるプーランクの2台のピアノのための協奏曲のリハへ向かった。会場は、Palazzo dei Congressi。

Piano 2は、Alexander Gurning で、彼もいいピアニストだ。指揮はヤツェク・カスプスジク、オケはスイス・イタリア語放送管弦楽団。カスプスジクの妥協の無いない指示は適切で、流石だ。彼との2010年の同音楽祭でのショパン ピアノ協奏曲第1番はベスト盤。第2楽章の最後のピアノの音を聴いて、何度涙した事か。で、やっぱり彼女の緩徐楽章は誰にも到達できない深遠な世界で、プーランクでも心に音楽が浸透していく。これを聴くために、この世界があるから、ずっと彼女を追いかけている。

さて、彼女は、ピアノの音を鳴らす点でも特別な天才である事は以前も述べているけれど、絶妙なペダリングも、天才の成せる業。もう、かれこれ40数年彼女のファンで、雑誌の記事も一通り目を通していたけれど、不思議な事に、彼女のペダリングに言及した記事を見かけた事が無い。細かい欠点を天下を取ったように書き立てたり、評論のための文章だったり(聴かなくても書ける。実際寝ていた評論家も目の当たりにしている)、かつては、毎度、的外れな事ばかり言っている評論家もいたし、もう雑誌を見なくなって久しい。

続いて、Babayanによるプロコフィエフのピアノ協奏曲 第2番。これでもか、という位、猛烈に弾きまくる所が続き、皆で顔を合わせて笑ってしまう位。彼の演奏は、まるでフェラーリ製のブルドーザーのよう。終わったら、彼はMarthaに「聴こえた?」 と。

リハ終了した後のスナップを1枚だけ紹介。左は、この音楽祭の常連:酒井 茜さんで、右は、Chopin and his Europe 音楽祭のディレクター:Stanisław Leszczyński さん。酒井さんはMarthaと無二の親友で、8月には、昨年6月にこのLugano音楽祭で演奏されたMarthaとの「春の祭典」のCDのリリースが発表されている。楽しみだ。 今回のLugano音楽祭に来れたのも彼女のお陰で、他にもMartha関連は、彼女に全面的にお世話になっている。感謝してもしきれない存在。

また、Stanisław Leszczyński さんは、ブリュッヘン/18世紀オーケストラとの一連の公演の仕掛け人。彼は、1965年のショパン・コンクールから彼女を聴き続けている、との事。ブリュッヘン/新日本フィルの公演は、シューマンの交響曲を聴き衝撃を受け、以来、ほぼ全公演に通った。冒頭の数小節を聴いただけで、全く違うハーモニーの美しさに愕然となった。今迄さんざん聴いてきたものは、いったい何だったのか、と思わせる位。以下は、彼のプロデュースしたDVD、CDの一部。

どのDVD、CDも聴くのを止めれなかった。1日中、ずっと繰り返して聴いていても、それでも感動が続く。ブリュッヘン/18世紀オーケストラだけでなく、ピレシュを選んだ所が、私とベクトルが全く同じ。彼には感謝! 感謝!
 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

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