2023年10月1日公開 更新:2023年10月4日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

37. ルガーノ音楽祭-6

6月27日(土)  午後からリハーサル。今日の演奏会の目玉は、何と言ってもBabayan氏とのデュオ。彼の編曲による、プロコフィエフのハムレット Op.77〜Lo spirito del padre di Amleto、エフゲニー・オネーギン Op.71〜マズルカ、ポルカ、スペードの女王 Op.70〜ポロネーズ、プーシキン・ワルツ Op.120、戦争と平和 Op.91〜Valzer di Natascia e Andrei、スペードの女王 Op.70〜Idée fixe。






ところがこれが壮絶なリハで、Martha がうまく弾けない度にイライラを募らせ、ピリピリした緊張感は空前絶後。しかも、遠慮無くレコーディング・ディレクターから指示が飛ぶ。譜めくりのタイミングが悪いとパーンと楽譜に手が出て、譜めくりの人はさぞ大変だったろうと思う。Babayan の譜めくりをしていた人(彼の生徒)と話をしたけれど、弾くより断然難しい、と言っていた(私も一度だけ彼女の譜めくりをやった事があるけれど - しかも初見 - 死ぬ程恐ろしかった)。

  

さて、コンサート。例によってトップはMartha とBabayan。そもそも相手がMartha だから、Babayan の編曲だって遠慮無く超絶技巧を散りばめているし、はたして.... 

いつも、GPでダメだ、ダメだを連発するが、やっぱり凄い! 本番では、何事も無かったように物凄い音楽が炸裂する。終曲での二人の連打で、観客は興奮の坩堝に。



笑顔が全てを物語っていますね。

しばらくどよめきが残った後は、Alexander Mogilevsky、Ilya Gringolts、Nathan Braudeによる、ブラームスのホルン三重奏曲 変ホ長調 Op.40(ただし、ホルンのパートはヴィオラ)。これまた熱い演奏。一昨日もそうだったけれど、若者がしっかりと自分の音楽をぶつけてくるし、観客もストレートに反応。これが演奏会でしょう。日本で、どうしようもない有名人の演奏に「ブラボー」で、何度倒れそうになった事か。


 

続いては、Gautier Capuçon とNicolas Angelish によるシューマンのアダージョとアレグロ Op.70。私は、悲しい位下手くそなチェロ弾きだが、彼のチェロの音は本当に好きで、あんな音でたっぷりフレーズが弾けたら、といつも思う。Angelish のピアノは、いつも歌があっていい。体は大きいけれど、音楽は繊細。

最後は、Nicolas Angelish とGautier Capuçon にクラリネットの名手 Paul Meyer が加わり、ブラームスのクラリネット三重奏曲 イ短調 Op.114。


これまた名演。名手揃いなのだけれど、期待を全く裏切らない。毎日心底思う。本当に、ここに来て、来れて、本当に良かった!!

今回、大変快適だったのは、自由に撮影できた事だ。といっても、撮影には消音モード+消音ケースを用いたのは当然で、さらに音楽を本当に愛する者としての観客への配慮、公式カメラマンへの配慮、撮るべきタイミング等々、全て細心の注意を払っているのはいつもの通り。それでも日本では、自分の個人的な演奏会ですら、三脚の立てる位置さえこと細かに注意、制限される。他にも、面倒くさい事が山ほど。「黄色い線まで下がってください。」、「手すりにつかまって下さい。」、「まもなく信号がかわります。」、全部不用、うるさい !

そういえば、現地の新聞社のカメラマンが撮影に来ていた。この手の人達は音楽に関心が無いので、コンサートの最中でも消音せず、バシャバシャ写真を撮っていた。録音もしているのだが... ただ日本でも同じで、以前、ベルリン ・フィルの演奏会に皇太子がお聴きにいらした時、新聞社の人達が写真を一通り撮った後、コンサートの最中に2F最前列で携帯を掲げてメールしていた。こんなに鈍感だったら、撮影も遥かに楽なんだけど。
 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

#Argerich  #アルゲリッチ  #Lugano Festival  #ルガーノ音楽祭

目次/タイトル