2023年10月1日公開 更新:2023年10月3日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

34. ルガーノ音楽祭-3

6月25日(木)夜  20時30分からは本番。大、小のプログラムの他、公演前には、印刷された1枚のプログラムが配布される。大きなプログラムには、音楽祭専属カメラマンのAdriano Heitman 氏の素敵な写真が満載されている。

公演のトップ・バッターは、Geza とのバルトークのルーマニア民俗舞曲。本来なら彼女はトリなのだろうけれど、最後の出番は嫌いなのでいつも出番は早い。彼は愁いのある曲の演奏は絶品で、誰にもあの味は真似できない。彼のフレーズを一度知ってしまうと、他の人の演奏が、ひどく凡庸に、そして表情が何も無いように感じてしまう位だ。今回はMartha を撮りに来たので、撮影初日、という事もあって彼を撮れなかった。Geza ごめんなんさい。ここには、2011年5月に来日した時の写真を出しておきます(ちょっと若い)。

彼女とGeza の後だと、さぞ演奏しにくい事だろうと思いきや、Ilya Gringolts Polina Leschenko が、俺たちの音楽を聴いてくれ、とばかりメンデルスゾーンのヴァイオリン・シナタ ヘ長調をがーん、とぶつけてきた。全く引けをとらない、見事な熱演。観客からも大喝采を浴びた。

前半最後は、Annie Dutoit、Alexander Gurning、Dora Schwarzberg、Lucia Hall、Nora Romanoff、Jorge Bosso、Simone Mancuso(指揮) による、Milhaud Cantate de l’enfant et da la mère (su poema di Maurice Carême。最近、Annieはナレーションで音楽祭での親子共演を果している。大変きれいなフランス語でのナレーション。残念がら意味はわからないけれと、ニュアンスは十分伝わる。8月には、広島と東京でも公演が予定されている。楽しみだ。

 

後半は、Lyda Chen とChristina Marton によるプロコフィエフのロメオとジュリエット(Borisovsky編)から。 馴染みの曲をヴィオラで聴くと、これがまたしっとりとしていい。やっぱりヴィオラも“歌う”楽器だ。

続いて、Dora Schwarzberg とWalter Delahunt のモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ K.454。これは、大御所らしい圧巻の演奏。私は、Dora の演奏はヴィブラートがきつくて苦手なのだけれど、そんな事をすっかり忘れてしまって撮りながら感嘆していた。客席からはブラボーと口笛、Martha も拍手でお出迎え。

最後は、Ivry Gitlis とAnton Martynov の、バルトークのヴァイオリン二重奏曲 から 。Ivry の演奏会は、入場の時から既にパフォーマンスが始まっている。彼のフレーズのとり方と歌い方は、いつ聴いても魅了される。

さて、実に心に届く演奏なのだが、夜も更け、派手さも無いのか、演奏の途中なのに帰る観客が幾人も... 露骨に目に入っていると思うのだが。しかし、終わってみれば、これまたブラボーと暖かい拍手。なんと長く充実した1日であったろう。本当に、ここに来て、来れて良かった!

ほとんど寝ていないし0時近いので、Martha に挨拶してホテルに戻る事にした。楽屋に行ったら、誰かの母親が亡くなった、との事でメールを打ち始めた。天井のミラーに映った姿が面白い。
 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

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