2023年10月1日公開 更新:2023年10月2日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

33. ルガーノ音楽祭-2

6月25日(木) という訳で、毎朝7時には朝食を済ませ、8時には観光に繰り出していた。ルガーノの観光スポットは、モンテ・ブレ、モンテ・サン・サルヴァトーレの2つの山と市内の聖マリア・デリ・アンジョリー教会、聖ロレンツォ大聖堂、湖畔、あとは船に乗っての訪問などなど。今日はまず手始め、という事で、ルガーノ市内を観光した。

市内は歩いて散策。坂が多く、なかなか体力を奪われる。おまけに連日超快晴で、容赦なく陽が降りそそぐ。帽子もサングラスも忘れたので、毎日大変だった。私の観光はガイドブックが書ける位びっちりと網羅していくのだが、ここでそれをやるととんでもない量になるので、ばっさりと省略。聖マリア・デリ・アンジョリー教会は、500年前の教会でベルナルディノ・ルイニのフレスコ画が有名。天井が面白いのかったので、ここではその写真を紹介。坂道を歩けば、画になる建物も散見。聖ロレンツォ大聖堂は修復中だった。また、街にはポスターがあったりして、これば別府と同じかな。

午後からは、Auditorio RSI でリハーサル。RSI: Radiotelevisione svizzera (Radiotelevisione svizzera di lingua italiana)、すなわち、テレビ/ラジオ局のスタジオ・ホールがメインの会場で、ここで連日演奏・録音が行われている。このAuditorio の素晴らしいのは、客席の角度だ。通常のコンサート・ホールより急峻だけれど、この角度だと、どの席でも演奏のニュアンスが聴き取れ特等席となる。その座席数は400少々。日本だと、神奈川県立音楽堂が、同様 の傾斜で音響が抜群に素晴らしい。1900年程前に作られたコロッセオと同じ作りの石造りの円形劇場では、舞台中央で鍵を落としても最後尾の席でさえしっかりと微細な音まで聴き取れるが、現代では 軽微な傾斜な客席が多く、古代の知恵・経験は生かされていない。RSI では、壁という壁に素敵な写真が飾られてあった。 こういうセンスが、日本にもあったらなあ。


さて、さっそくDora Schwarzberg とWalter Delahunt のモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ K.454 のリハが始まった。 いろいろなリハ、GPに立ち会う事もあるけれど、徐々に完成度が高まっていく過程を見・聴けるのは本当に勉強になる。また、本番との対比も実に面白い。

続いて、Lyda Chen とChristina Marton によるプロコフィエフのロメオとジュリエット(Borisovsky編)。ちょっと危なっかしいところにヒヤヒヤ。Lyda は美人だから、つい沢山撮ってしまうなあ。一部を紹介。

 

Ivry Gitlis とAnton Martynov は、バルトークのヴァイオリン二重奏曲。本番では何曲演奏するのかな? 彼はモノクロの写真が似合う。

さて、真打登場。今日は、Geza Hosszu-Legocky とバルトークのルーマニア民俗舞曲。2〜3日前に、曲目がモーツァルトのピアノ四重奏曲 K.478から変更になった。彼女が弾くなり、ピアノの鳴り、音楽のスケールがまるで違うのに、いつもながら驚嘆。彼女ほど、ピアノを見事に鳴らせる人はいない。大男のff は音が歪んで汚いけれど、彼女のff は音は決して歪まずズーンと響き、結果的に誰よりも音量も大きい。天才的なバネのなせる業か。同年代のピアニストが軒並みテクニックを落としていく中、彼女には加齢というものには無縁らしい。

写真・右側の男性は、この音楽祭のプロデューサー Carlo Piccardi 氏。全ての公演、リハーサルに立ち会うだけでなく、Marthaの送り迎え(彼女が会場を去るのは深夜)も行っている。70を過ぎているのに、行動も “運転” も、すこぶる元気だ。えらぶったところが全く無くて、こちらが恐縮してしまう程(もっとも、私が存じ上げている “本当に偉くて尊敬できる人” は、皆そうだけど)。
 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

#Argerich  #アルゲリッチ  #Lugano Festival  #ルガーノ音楽祭

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