2023年10月1日公開 更新:2023年10月2日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

32. ルガーノ音楽祭-1

メイン会場 Auditorio RSI の入り口にて

ずっと憧れていたルガーノ音楽祭。連日、アルゲリッチやベテラン〜若手演奏家により刺激的な演奏が繰り広げられ、そして2013年までは、過去に演奏されたほとんどのものが、いつでもsiteから聴く事ができた。また、ストリーミング中継もあり、さらに毎年素晴らしいCDもしっかりとリリースされていて、こんな素敵な音楽祭に一度行ってみたかった。
しかし、 4〜5月はGW、そして別府アルゲリッチ音楽祭もあるので6月に休暇を取るのは極めて難しく、行く事はできなかった。 しかし、やっと2015年、何とか調整して6月の最後の週に行ける運びとなった。また、写真撮影の許可も下りた。

ルガーノは、スイスの南端。イタリアと国境を交えているし、言語はイタリア語だ。ミラノからバスでも行けるようだが、便の関係でチューリヒ経由で行く事にした。これはこれで大正解。初スイスだったが、国内便は北のチューリヒから南のルガーノまでスイスを縦断。アルプス山脈を眼下に臨み、オマケに何とルガーノの美しい風景の真上をも通過して行き、さながら遊覧飛行のようであった。なお、飛行機の右側と左側ではだいぶ風景が異なるので、行きと帰りを同じ側に座ると両方楽しめる。

 6月24日(水) 日本出発は6月24日朝で、ルガーノには同日18時着。この日は、ギトリスのマスタークラスの生徒の発表会があり、さっそくレンタカーで会場のGrande aula del Conservatorioへ向かった。当初、どうせコンサート会場の往復程度なら、とタクシーでの移動も考えたが、スイスのタクシーはぶっ高い、という事でレンタカーを勧められた 。が、これはその通りだった。けっこう大活躍で、これが無かったらとんでもない事になっていたところだった。

聴けたのは、後半。まだまだこれからの人から、将来活躍するであろう人まで。日本でも彼のマスタークラスを幾度か見たけれど、ちょっと右の肘の位置を変えるだけで音色が激変し、魔法のようだった。彼は93歳。毎年来日し、若者と同じ日程の演奏会をこなす。

その後、 Auditorio RSI に向かった。ネット中継で散々見た、この会場! やっとご対面、ということで感慨も一入だ。程なくして、Marthaが一人練習を始めた。私は、彼女ほど練習をする人を知らない。努力する、できるのも天才、才能だ。以前、彼女は言った。「私は練習は嫌いじゃないの。ただ、始めるまでが大変なの。わかる?」 結局彼女は、この音楽祭でも滞在している家と会場をずっと往復していただけのようだった。また、自分に課するハードルは限りなく高い。だから50年以上、頂点に君臨し続けている。
1人で練習したいの」 との事だったので、ホテルに戻った。ホテルは、ルガーノの市内は満杯だったので、ちょっとだけ離れたParadisoにあるホテルを予約しておいた。また、レイク・ビューがディスカウントされていたので、せっかくなのでこれを選択。これが良かった。

湖は、刻一刻と表情を変え、飽きることが無い。これは、明け方の湖。上はルガーノ市、下はモンテ・ブレ(ブレ山。急な斜面にびっちり住宅が並ぶ)。で、何で明け方か? 実は時差にめっぽう弱くて、いつも最低1週間は狂いっぱなしになるのだ。日本に帰ってからも同様。つまり、1ヶ月はぐじゃぐじゃになる。この日も睡眠、1時間。という事は、朝からガンガン観光ができる 。1日がもの凄く長い、という事でもある。それにしても人間は水の中では生きれないのに、海や川や湖など、水辺に限りない魅力を感じる。太古の記憶がそうさせるのか。
 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

#Argerich  #アルゲリッチ  #Lugano Festival  #ルガーノ音楽祭

目次/タイトル