2023年6月25日公開 更新:2024年2月29日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

22. アルゲリッチと錦糸町

2010年12月、錦糸町の和食店にて。
水槽の魚をしばらくじっと見て、「かわいそうねえ。自由が無いのね」。

「錦糸町はね、どこか故郷、アルゼンチンに似たところがあって好きなの。」
気取らない下町情緒がいいらしい。ホールも、トリフォニー・ホールはお気に入り。しかし、サントリー・ホールは、弾いていて孤独感、疎外感があって好きではないそうだ。
 

2010年11月28日トリフォニー・ホール。彼女は開場直前まで1人で練習していることが多い。

顧みると、トリフォニー・ホールでは、1998年のトリオ2000年のソロ(+デュオ)2005年のスペシャル・コンチェルト2008年の室内楽2010年のコンチェルト等が行われている。ちょっと特別なコンサートが多い。私もここの音響は好きで、ピレシュやアルド・チッコリーニなど、忘れえぬ数多くの名演とも接してきた。音楽が鳴り響く空間、名演が数多く行われている空間は特別で、年月をかけて音楽の振動で熟成されていく壁(木材)は音がどんどん良くなっていくので、我々は文化遺産として残さなければならない。楽器と同じである。音の明瞭度が失われず音楽表現が心に直結する稀有で素晴らしい音響、そして全席が特等席である神奈川県立音楽堂は、一時建て替えの危機にあった。建築屋は、空き地を見ればビル、マンションを建てる、少し古い建物なら壊して建て替える等ばかり考え、時に政治献金という合法的賄賂や接待で政治家を巻き込む。昭和の建築物は次々と建て替えられているが、文化遺産は残す、ということも考えて欲しい。しかしながら、日本には異常な数の音楽専用コンサート・ホール+パイプオルガンがあり、これらの維持は財政を圧迫するというのも事実だ。アーレントのメカニカル・パイプ・オルガンがあったカザルス・ホールは日大に売られた後解体され、オルガンは日大の学食に飾りとして置かれているらしい。名工アーレントのオルガンが...

さて、 彼女の生活パターンだと、普通の飲食店が開いている時間帯に食事にありつけない場合が多い。コンビニもお世話になるし、一時、ローソンのおにぎりにはまった事があった。ぱりっとした海苔は、誰しも最初は衝撃を受けるようだ。写真は錦糸町のローソンにて。「あら、撮ったの〜?」

1998年5月
 

2008年晩秋、そんな錦糸町を夜、散歩することになった。賑やかな繁華街を歩いていると、怪しい店の看板が目に入った。「何て書いてあるの?」、「え〜、ん〜サービス...」、「何のサービスなの?」、「何? 、何?」、「....」。日本の風俗は、独特だからなあ。私からは申せませんでした。

2010年11月28日。公演後、マネージャー/ジャック・テレンと錦糸町を歩く。
 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

#Argerich  #アルゲリッチ  #Kinshicho  #錦糸町

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