2022年2月17日公開 更新:2024年2月21日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

14. メロンの彫刻

彼女の滞在している部屋が乱雑であるのは有名で、ファンなら誰しもが知っている。写真週刊誌なら、できるだけ汚い、めちゃくちゃに散らかった時の部屋の写真を撮って掲載し、「どうだ!」といったところだろう。そういった状況に接したこともあるし、周囲の人達が片づけるので、小綺麗な場合もある。しかしながら、乱雑な中にも彼女ならではのものがあったりする。

左:2002年7月28日のホテルの部屋にて。右:2018年5月20日の水戸芸術館の楽屋にて

部屋には飲みかけのボトルが40数本。部屋の全景は掲載しない。楽屋で靴を脱げば、ご覧の通り。こういった写真を皆はイメージ通り、と思うかもしれない。しかし、写真左上のテーブルのメロンは、このような形になっていた。

つまり、食べたい時にカットして食べたので、メロンの彫刻! 小袋に入ったお菓子。上に開け口があるが、真横から指を入れて取り出した。これも彼女流。この彫刻は、2002年7月のPMF音楽祭が終わって帰国する日の朝のもの。前夜、部屋が凄いことになっていて、明日昼、デュトワと同じ飛行機で帰国するので、「朝までに荷物をまとめておいてね」ということになっていたのであった。しかしながら心配なので、助っ人として参上したら、前夜のまんま。そこへデュトワ登場。「えっ、何も準備できていないの!? 俺が離婚した理由がわかるだろう!」。しかし仲良く朝食を食べて皆で一気に荷物をまとめて、嵐の如く去っていった。で、呆れているかって? とんでもない。彼女と過ごす時間は独特で余韻も長いのだ。

2008年12月17日、シモン・ボリバルとの公開リハーサルの楽屋。とあることで、彼女に100ユーロ程立て替えた。普段は請求することも無いのだが、彼女が支払う、といって差し出した。で、そのお札を見て、思わず受け取ってしまった。だってこれ、アートでしょう!


 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

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