2022年2月4日公開 更新:2024年2月20日

マルタ・アルゲリッチと50年

50 Years with MARTHA ARGERICH

マルタ・アルゲリッチの知られざるエピソード  by Y. KOSEKI

 

13. グリーグは弾きにくい

2008年5月21日、東京・紀尾井ホールでのリハにて
リハで物凄い熱演となり、これが本番だったらなあ...と

10回別府アルゲリッチ音楽祭。この時、別府と東京の紀尾井ホールで、グリーグのピアノとチェロのためのソナタ イ長調 Op.36 が演奏された。チェロは長年の朋友マイスキー。彼女は沢山のピアノ協奏曲を演奏してきているけれど、グリーグのピアノ協奏曲は、1968年10月にスウェーデン、1969年7月にブエノス・アイレスで演奏しただけだ。そこで、今後、弾く予定は?と聞いてみた。すると、
「グリーグは弾きにくいの。このソナタもそうよ。」と。
「協奏曲、すっかり忘れたわ。記憶に無いの。弾くなら一から始めないとね。」
「でも、プロコフィエフやショスタコーヴィチは弾きやすいの。他のピアニスト達、そう、プレトニョフもこの前同じことを言ってたわ。」

推測するに、プロコフィエフやショスタコーヴィチはピアノの名手でもあったので、頭の中で作曲というよりは、ピアノを弾きながら創っていたのだろう。そう言えば、チャイコフスキーのピアノ・トリオ イ短調「ある偉大な芸術家の思いでのために」の第1楽章も、譜面を開いて海老さんに、
「ねえ、ここ弾き難いんだけど、あなたどう弾いてるの?」と聞いていたこともあった。

ラヴェルの左手のための協奏曲。是非彼女の演奏を聴いてみたいのだが、あれは左手に物凄い負担がかかり、手を傷めるので弾かない、とのこと。残念だ。

ちなみに、ラフマニノフの3番の協奏曲。あれは、また弾かないの?と聞いたところ、「あの曲は難しい!」と。ショパンの3番のソナタも、「あの曲は難しい」と。貴女が難しいって弾かないなら、いったい誰が演奏するの...? 
 

アルゲリッチの録音、来日記録:Martha Argerich Recordings

#Argerich  #アルゲリッチ  #Grieg  #グリーグ

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